あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。
ブログを更新しようと頭の中で常に片隅に置いて考えていたのですが、早いもので気付けばあっという間に1月も中旬を迎えておりました。日々の仕事や雑務に追われていると、本当に日々が過ぎるのが年々早くなっていくと痛感しております。
さて今回も引き続き『高齢者の栄養』について述べていきたいと思います。
ご高齢の患者様の中には、歯や口腔の問題から食事量が低下している人や、病気の予防・治療のために食塩・タンパク質・カロリーなどを摂取制限することで食事から十分なエネルギーと栄養が摂れていないという人が多くいます。
高齢者が筋肉量や身体機能を維持する上で欠かすことのできない二つの栄養素を中心に解説していきます。
『フレイルやサルコペニアの予防・改善には栄養が必要!』
健康を保つためには、さまざまな食品群の食品・食材を満遍なく食べることが大切です。しかし、高齢になると病気や加齢による食欲不振から食事量が減ったり、偏った食事になったりすることで、実は必要なエネルギーや栄養素を十分に摂れていないことが少なくありません。栄養不足は筋肉量が減少するサルコペニアの原因にもなり、サルコペニアによって基礎代謝量が低下し、エネルギー消費量が減れば、食欲や食事量も低下して低栄養となり、さらに活動度が落ちるという悪循環(フレイル・サイクル)へとつながります。要介護状態になるリスクを減らすためには栄養が必須なのです。
『タンパク質とビタミンDをしっかり摂ろう!』
特に高齢者に摂って欲しいのが、タンパク質とビタミンD、そして油(脂肪酸)です。
タンパク質は筋肉や臓器などを構成する主要な成分で、生体機能を調節する酵素やホルモン、抗体を作る役割も担っています。ビタミンDは骨の健康に不可欠なだけでなく、さまざまな細胞の代謝にも関与する栄養素です。油には高齢者に最も大事なエネルギーを補うほか、健康に良い機能を併せ持つものがあることがわかっています。フレイル予防にこれらを意識的に摂るように心がけましょう。
なお、フレイルの人は亜鉛などのミネラルやビタミン類の血中濃度が基準値を下回っていることがよくあります。これは単に栄養摂取不足を反映するものであって、上記のように「補充することに価値がある」ということとは意味が違っています。欠乏症状がある場合は別ですが、その他の栄養素については単独で摂取をすすめるだけの十分な科学的根拠は今のところ得られていません。
フレイルやサルコペニアの予防・改善には、筋肉量、筋力、身体機能と強く関連するタンパク質を十分に摂取することが重要です。高齢者(65歳以上)のタンパク質の推奨量は体型や身体活動量に関わらず、男性は1日に60g、女性は50gを下限としています。
言い換えれば、1日に体重1kgあたり1.0〜1.25g以上のタンパク質を摂取する必要があるということなのです。
一見簡単なようですが、今元気な地域在住高齢者でさえ、多くは1g/kg体重/日も摂れていないのが現状です。では、タンパク質は食材にどのくらい含まれているのかというと、肉類の場合、鶏ささみ(若鶏・生)100gで23,9g、和牛ヒレ(生)100gで19.1g。調理方法などにもよりますが、50g以上のタンパク質を摂るには軽く250g程度の肉を食べなければならない計算になります。
『タンパク質の合成にはエネルギーが必要』
私達は食事で摂取したタンパク質を一旦アミノ酸に分解して、それを吸収して自分の体に必要なタンパク質を合成しています。そして、その過程では非常に多くのエネルギーが消費されます。ということは、タンパク質だけを一生懸命摂れば良いわけではなく、それに見合うだけのエネルギーを摂取しなければタンパク質は合成できないのです。
高齢者に必要な摂取カロリーは、年齢や性別、身体活動量によって異なりますが、低栄養の人なら体重を維持できる最低量ではなく、体重が増えるくらいの量が必要です。目標とするBMIの範囲も65歳以上では21.5〜24.9と高めになり、死亡リスクを見ても男性の場合BMI26くらいが最も低いことがわかっています。基準範囲以下の人は筋肉量を増やして体重を増やす。それが健康の秘訣と言えそうです。